ゲーム内容としては入国希望者を規則に従ってひたすら許可/不許可の審査をしていくだけ。
なんだけど、作業ゲーかと思いきや、この規則が情勢に伴って毎日変化していくため意外なほど単調さは感じない。
要は間違い探しなのだが、規則違反すると反則切符が切られる。
これが結構プレッシャーでなんというか、リアルに書類仕事している時のようで、嫌〜な気持ちになれること請け合い。
おまけにアルストツカなんて国名が職場の最寄駅名とニアピン賞なので個人的に-65535点。
書類を受け取り、ルールブックのページをめくって内容を照合し、ハンコ台を引き出して押印し、書類を突っ返す。
一連の流れはマウス操作で実行するのだけど、ドラッグ&ドロップの感触とかがリアル…というのか、何と言うか。
デジタルなんだけど手触りのある感じ、とでも言うか…。
操作感がなかなか心地良くて◎。
審査した人数に応じて給料が支払われる。
ちなみに家賃が払えなくなると犯罪者扱いで逮捕されてゲームオーバー。
お前の代わりなどいくらでもいると言うかのようなこの待遇。労働者は畑で採れる、というのが共産主義の常識やで。
普通にやっていると家賃と生活費を払うので精一杯になってしまうので、出来るだけ数をこなして収入を増やしたいところだが、規則違反は罰金なのでいい加減な仕事はできないジレンマ。
おまけに確認しなければならない項目はどんどん増えていくので作業効率は低下する一方だ。
この夢も希望もありゃしない閉塞感も、ある意味リアル…。
入国希望者はそれぞれに問題を抱えていたりでドラマがある。
嫌味を言われる程度なら可愛いものだが…。
こちらのご婦人はクラブで働くために入国希望だそうな。
うーん…。
問題のDari氏。
書類不備はないし、犯罪者ってわけでもない市民の入国拒否って、完全に人権侵害だよね。
自分にも守らなければならない家族と生活があるし。そもそも規則は規則。
入国を許可するしか。
で、こうなる。…この後味の悪さ。
ちなみに規則違反は2回まで罰金が免除される。
つまり、意図的に規則を無視する選択が可能、という点がこのゲームの肝なんじゃないかと。
情をかけるか、仕事に徹するか、の判断はプレイヤーに委ねられるわけで。
ゲームなのでどっちだって構わないのだけど、自分の置かれた立場と感情の板挟み、みたいなのは多かれ少なかれ現実にあることで、
一方リアルにはリセットボタンはないので、「そういうものだから」で思考停止している部分ような、
そういう後ろめたさみたいなところに訴えかけられているような感覚があって…。
自転車操業状態なゲームバランスとか、主人公の置かれた環境の閉塞感とか、デフォルメとして現実にオーバーラップするような要素になってて、ある意味低所得労働者の悲哀をバーチャルシミュレートできてたり、するんじゃないかなあ…。
社会とは、労働とは何か、などと考えさせられる怪作。
…かもしれない。