【イントロ】
1986年に起こったチェルノブイリ原発事故から20年後、再び発生した謎の大爆発によって直径30kmに及ぶ周辺地域は、
放射能と奇形のモンスターで溢れる汚染地帯と化した。
外界と隔離されたこの空間は、アノーマリーと呼ばれる異常現象が発生し、不思議な力を持つ宝石-アーティファクト-が
生み出される特殊な世界、"Zone"と名づけられる。
興味を惹かれた外界の科学者や好事家の金持ち達がそれらを求めて多額の報酬を出すようになると、
一攫千金を夢見るならず者や、スリルを求める冒険家達が集まり、やがて彼らはstalkerと呼ばれるようになった。
一日目
久方振りに足を踏み入れるZoneは相変わらず殺風景で寒々としていた。
Zoneでは毎日どこかで奇妙なことが起こっている。最近は軍の調査隊のヘリが次々と消息を絶っているらしい。
その原因を調べるのが今回の任務だ。
このあたりは元々川だったとかで、そこらに打ち捨てられた廃船が転がっている。
stalker達はそれらを拠点にして生活しているらしい。
まずは彼らの集落を探し、そこで情報を集めることにしよう。
早速ミュータントの出迎えを受ける。一匹で行動しているようだったので肩慣らしに相手をしてやった。
久しぶりに使うカラシニコフの反動の大きさに戸惑う。
この銃では、体の大きいミュータントならいざ知らず、的の小さい対人戦などでは使い物にならないだろう。
少なくともリコイルを軽減する改善くらいはしておかないと。
しばらく歩くと巨大な船を見つけた。どうやらここがstalker達の拠点らしい。
見るからにボロボロだが、甲板に見張りを立てられるし、基地にするにはもってこいだな。
船の中には十数人のstalkerがたむろしていた。時間によって顔ぶれは入れ替わる。
中にはそのまま帰ってこないヤツも…。
技術者がいるというので早速銃の改造を依頼しようと思ったのだが、作業に必要な工具が足りないらしい。
子供が学校で工作の時間に使うようなお粗末な道具でさえ、ここでは貴重品か…。
少し離れた場所に製材所の跡地がある。そこなら工具の一つや二つ手に入るだろうと言われて来てみたのだが…
そこらじゅうにゾンビがウロウロしてやがる。道理で誰も近寄らないわけだ。
ヤツらは銃を扱えるが、動きが鈍いからZoneではむしろ組し易い相手なのが幸いだ。さっさと片付けて帰るとしよう。
船で懐かしい顔に出会った。Nimbleだ。
前回会ったのはCordonのルーキーキャンプだったが、banditにとっ捕まったりロクな目にあってない間抜けなヤツだ。
何だってこんなところにいるのか気にはなったが、詮索はしないでおく。
Zoneでは大抵その方がいい。妙な情やしがらみはいつも厄介事のタネになるからだ。
今夜、banditと武器ブローカーの取引があるという情報が入った。
襲撃作戦に人手が足りないらしいので手を貸すことにする。
banditについては、力を付ける前に潰しておいた方がいいし、銃の改造につぎ込んだから金欠で、報酬も魅力的だった。
夜間の奇襲作戦が功を奏して、あっさり片付いたのだが…
ブローカーの素性は、身なりからしてどうやらDutyのメンバーだったらしい。
Dutyは危険なミュータントを定期的に掃除してくれているし、一般のstalker達のトラブルに手を貸してくれたりもする。
確かに融通の利かないお堅い所もあるが、Zoneの中では唯一、仁義の概念を持ち合わせている連中だった。
それが、事情はどうであれ、ゴロツキbanditどもに手を貸していたというのはショッキングな出来事だ。
帰り道、不気味に光る廃船を見つけた。
遠目だからはっきり分からないが、この光り方はアーティファクトに違いない。
アーティファクトは、売ればいい金になるから放っておく手は無い。誰かに先を越されるというのも面白くない。
但し、周辺は大抵放射能汚染かアノーマリーか、またはその両方で酷いことになっている。
慎重に近づかないと、治療費のほうが高くつくハメになるし、時にはその対価が命、なんてこともあるのだ。
どうにかこうにか潜り込む事が出来たが、光っていたのは船の舵だった。
どうやら放射線やアノーマリーの影響でアーティファクト化しているようだ。こんな現象は初めて見るが、
探知機も反応しているから間違いない。
なんの役にも立ちそうにない代物だが、金を払う物好きもいるかもしれない。とりあえず持って帰ることにする。
船を出るとどこで見ていたのか知らないが、一人のstalkerが声をかけてきた。
なんでも、怪我をした仲間を治療するためにこの舵の力が必要らしい。だから譲ってくれ、だと。
今時そんな古い手にひっかかる間抜けはいないだろうというものだ。
無視して立ち去ろうとすると、物陰に潜んでいたお仲間と一緒にライフルをぶっ放してきやがった。
ザマみろ、クソッタレどもめ。
まあ、Zoneでは日常茶飯事のことだ。わずかばかりの金を手に入れるのも、自然と命懸けになるシステムになっている。
不条理に泣きを見た連中もいたことだろうが、命が惜しければとっととZoneから立ち去る方が賢明というものだ。
そうこうしている内に夜が明けた。
朝日に浮かび上がるZoneの風景はとても美しい。
ここに缶コーヒーなんていう気の利いたものがあればいいのに…。